ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

〈間柄〉 【あいだがら】


 「本書では、ここにやや特殊な意味を与えよう。すなわち〈間柄〉とは、特定の〈関係性〉を抽象化した概念であり、そこには特定の〈間柄〉に相応しい“振る舞いの型”であるところの〈間柄規定〉というものが内包される、といったようにである。」 (上巻 214-215



 人間存在が「人間的〈関係性〉」を構築する際に用いている、互いの振る舞いを規定している特定の枠組みのこと。〈間柄〉を媒介とすることで、われわれは自らの振る舞いから迷いを取り除くことができ、特定の〈他者存在〉の振る舞いを予想できるようになる。

 例えば特定の誰かと「クラスメート」という〈間柄〉を媒介するとき、われわれは相手と「クラスメート」に相応しい「振る舞いの型」(=〈間柄規定〉)を用いて接することになる。〈間柄〉は複雑な〈関係性〉の網の目の中で、「〈我-汝〉の構造」が無秩序に入り組む自体を回避させ、そこに一定の秩序を与える(〈関係性〉の「形式化」)。

 それによってわれわれは「実像-写像」の「内的緊張」からくる負担を軽減できるものの、〈間柄〉には、望まない振る舞いを強制させる側面があり、別の形で新たな「内的緊張」をもたらす側面がある(その極端なケースが、「経済活動」において見られる「財やサービスを生みだす側」と「財やサービスを消費する側」という「〈我-汝〉の構造」をほとんと介在させる余地のない画一化された〈関係性〉(=「(〈間柄〉によって)塗りつぶされた〈関係性〉」)である)。

 西洋近代的な人間の理想である〈自立した個人〉の思想が拡大すると、人々は〈間柄〉を「かけがえのないこの私」を拘束する悪しき抑圧とみなす「ゼロ属性の倫理」が拡大することになる。しかし〈間柄〉そのものは、〈関係性〉を十全に成立させるために不可欠な原理であり、それを突き詰めると、〈関係性〉は「0か1かの〈関係性〉」という歪んだ形状にならざるを得ない。

 〈間柄〉の内実である〈間柄既定〉は、日々人々の相互作用を通じて変化していくものであり、われわれはそれを時代の要求や人々の望みに沿った形に修整することができる。ただしそのためには相応の時間や努力が必要である。

 なお、本書で〈間柄〉に相当する概念を、社会学では役割(role)という概念を用いて表現することが多い。しかし本論では特殊な含意を込めた〈役割〉概念が用いられるので、〈間柄〉と規定している。