おしらせ
残念なことに、2023年11月末をもって、本書の刊行元であった農林統計出版が廃業してしまいました。
ここでは、上巻、下巻あわせて50万字にもなる同書の全文をPDF等で公開したいと思います(せっかく書いたものが何らかの形で後世に残るものであって欲しいと願います)。
なお、筆者が出版契約時に買い取った分を楽天ラクマで販売しています。入手を希望される方はご覧ください。
残念なことに、2023年11月末をもって、本書の刊行元であった農林統計出版が廃業してしまいました。
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本書は、こうした問いに対して、700万年の人類史を射程に収めつつ、「人間とはいかなる存在なのか?」という最も根源的な問いに遡りながら思索を深めていきます。
そしてわれわれが造りあげる〈社会〉とは何か、われわれが宿命づけられている〈生〉とは何か、人はなぜ”他者”と関わることに苦しみを伴うのかといった問題に光をあて、人間存在の根本原理としての〈役割〉と〈信頼〉と〈許し〉の原理、そして〈存在の連なり〉のもとで〈有限の生〉を生きることの〈美〉と〈救い〉の原理について探ります。
(1)不透明な時代における知への危機感
(2)「現代人間学」の方法論的特徴と〈思想〉の実践
(3)本書における三つのアプローチ
(4)本書の構成について
(5)本書の底本と表記(文体)について
(1)「理念なき時代」の参照点としての「20世紀」
(2)「20世紀」における“経済成長”の含意
(3)「20世紀」における“科学技術”の含意
(4)「理念なき時代」の始まりと「20世紀」の“亡霊”
(5)「理念なき時代」における“科学技術”のもうひとつの含意
(6)変容する人間の存在様式
(7)現代において見られる矛盾の兆候――〈関係性の病理〉と〈生の混乱〉
(8)“人間の未来”と二つのシナリオ――「火星への移住」が可能になるとき
(1)〈自立した個人〉というイデオロギー
(2)〈自立した個人〉をめぐる根源的な矛盾①――約束されたシナリオと「20世紀」
(3)〈自立した個人〉をめぐる根源的な矛盾②――〈生の自己完結化〉および〈生の脱身体化〉の“写像”としての個人の「自立」
(4)新たな“人間学”の必要性
(1)なぜ人間学において〈環境〉が問題となるのか
(2)主体によって定義され、存在を成立させる基盤となる〈環境〉の概念
(3)「人間的〈環境〉」における、〈環境〉の「二重構造」
(4)「人為的生態系」の“物質的側面”と“非物質的側面”
(5)「人間的〈環境〉」における、特異な構造としての〈社会〉
(1)人間の“質的変容”と人類史における特異点
(2)〈人間〉、〈社会〉、〈自然〉の三項関係という枠組み
(3)第一の特異点――「農耕の成立」と「〈自然〉と〈人間〉の間接化」
(4)第二の特異点――「近代的社会様式の成立」と「〈社会〉と〈自然〉の切断」
(5)第一中間考察――第三の特異点としての〈自己完結社会〉
(1)「人間的〈生〉」と〈生活世界〉
(2)「人間的〈生〉」における〈生存〉、〈現実存在〉、〈継承〉の諸契機
(3)「不可視」となった「人間的〈生〉」
(4)「〈ユーザー〉としての生」と〈生活世界〉の「空洞化」
(5)「集団的〈生存〉」と〈根源的葛藤〉、そして「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉の概念
(6)「〈生〉の三契機」の内的連関
(1)〈社会的装置〉という概念
(2)「〈生〉の舞台装置」と〈社会的装置〉の連続性/非連続性
(3)〈社会的装置〉の〈生活世界〉からの自立化
(4)第二中間考察――「〈社会〉と〈人間〉の切断」の再考
(1)「人間的〈関係性〉」という視点について
(2)「人間的〈関係性〉」の基本構造としての「〈我‐汝〉の構造」
(3)「人間的〈関係性〉」における〈間柄〉の概念
(4)「人間的〈関係性〉」における〈距離〉の概念
(5)「ゼロ属性の倫理」と「意のままになる他者」
(1)人間存在における〈共同〉の概念
(2)「牧歌主義的‐弁証法的共同論」批判
(3)〈共同〉概念の再定義
(4)〈共同〉が成立するための諸条件
(5)「〈共同〉のための作法や知恵」としての〈役割〉、〈信頼〉、〈許し〉の原理
(6)〈共同〉破綻と「不介入の倫理」
(7)第三中間考察――諸概念の整理
(1)「意味のある過去」と、「生きた地平」に立つことについて
(2)重厚な〈生活世界〉と〈社会的装置〉の萌芽
(3)構造転換の“過渡期”と〈旅人〉の時代
(4)〈郊外〉の成立と〈旅人〉の定住化
(5)「情報世界」の台頭と〈漂流人〉の出現
(6)〈自己完結社会〉の成立
(7)“時代”と人間の〈生〉
(1)〈無限の生〉と〈有限の生〉――「世界観=人間観」という視座
(2)〈無限の生〉と西洋近代哲学の深淵
(3)〈無限の生〉の「無間地獄」
(4)究極の「ユートピア」――「脳人間」と「自殺の権利」
(5)〈有限の生〉とともに生きる
(6)〈世界了解〉①――人間の〈救い〉について
(7)〈世界了解〉②――人間の〈美〉について
(8)結論
(1)「自由」の問題について
(2)「疎外論」の問題について
(3)「個と全体」の問題について
(4)「自己実現」の問題について
(5)「ポストモダン論」について
本書は抽象的な思考を中心とした長文となりますので、はじめて手に取ってくださった方が最初から順に読んでいきますと、本書の本当に伝えたい内容に行きつく前に、挫折してしまうかもしれません。
それはとても残念なことですので、このページでは、予備知識のない方が本書を読むにあたって、もっとも手軽で効率がいいと思われる方法を、以下、ご紹介しておきたいと思います。
まずは、以下の順序で該当箇所を読んでみてください。
上巻:はじめに↓下巻:第十章第六節:〈世界了解〉①――人間の〈救い〉について↓下巻:第十章第七節:〈世界了解〉②――人間の〈美〉について↓下巻:第十章第八節:結論 |
この部分を読んでいただきますと、詳細は不明であっても、本書が伝えようとしている内容の雰囲気は感じ取ってもらえると思います。最初の「上巻:はじめに」については、リンク先から原文を読めるようにしてありますので、そちらを読んでいただいても構いません。
そして、ステップ1まで進んだ方で、本書に興味を持ってくださった方、もっと読んでみたいと感じてくださった方は、ぜひ今度は、以下の順序で該当箇所を読んでみていただけたらと思います。
上巻:第四章第五節:第一中間考察――第三の特異点としての〈自己完結社会〉↓上巻:第六章:第四節:第二中間考察――「〈社会〉と〈人間〉の切断」の再考↓上巻:第七章第五節:「ゼロ属性の倫理」と「意のままになる他者」↓上巻:第八章第六節:〈共同〉破綻と「不介入の倫理」↓下巻:第九章第六節:〈自己完結社会〉の成立↓下巻:第九章第七節:“時代”と人間の〈生〉↓下巻:第十章第一節~第十章第五節 |
ここまで読んでいただくと、本書の理論的な枠組みと考察内容がある程度理解していただけると思います。
著者が言うのもなんですが、本書は「分かりやすい」本だとは思いません。それでも、どこかで何か響くものを感じ取っていただけるようでしたら、ぜひ最後まで一度読み切っていただきたいと思います。
〈思想〉の書物は、著者の思考の系譜が物語のように現れている部分があって、重要な主題や概念は、形を変えながら繰り返し出てくることになります。
ですので、途中で理解できない一文があったとしても、読み進めるうちにイメージが共有されていき、文章に込めた世界観や人間観が、突然身近に感じられるときがきたりすることがあるからです。
ぜひ辛抱強くお付き合いいただけたらと思います。