本書の詳細


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

おしらせ

 残念なことに、2023年11月末をもって、本書の刊行元であった農林統計出版が廃業してしまいました。
 ここでは、上巻、下巻あわせて50万字にもなる同書の全文をPDF等で公開したいと思います(せっかく書いたものが何らかの形で後世に残るものであって欲しいと願います)。

 なお、筆者が出版契約時に買い取った分を楽天ラクマで販売しています。入手を希望される方はご覧ください。
 

   

本書について

情報技術、ロボット/人工知能技術、生命操作技術とともに、われわれはいかなる時代を生きようとしているのか? この時代を生きることの意味とは何か? われわれが感じているこの”生きづらさ”は、何に由来するのか?


 本書は、こうした問いに対して、700万年の人類史を射程に収めつつ、「人間とはいかなる存在なのか?」という最も根源的な問いに遡りながら思索を深めていきます。

 そしてわれわれが造りあげる〈社会〉とは何か、われわれが宿命づけられている〈生〉とは何か、人はなぜ”他者”と関わることに苦しみを伴うのかといった問題に光をあて、人間存在の根本原理としての〈役割〉〈信頼〉〈許し〉の原理、そして〈存在の連なり〉のもとで〈有限の生〉を生きることの〈美〉〈救い〉の原理について探ります。



『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(上巻)』(上柿崇英著/農林統計出版)


  
〈自己完結社会〉――それは情報技術、ロボット/人工知能技術、生命操作技術とともに肥大し続ける〈社会的装置〉に人々が深く依存し、それによって生身の他者と関わっていく必然性、生身の身体とともに生きる必然性が失われていく社会のことである。

「われわれが必要としているのは、人間が生きることの悲哀や苦悩を無邪気な理想によって塗りつぶしていくことではない。かといって、人間が生きることの無力さと残酷さから、自己憐憫に沈んでいくことでもない。求められているのは、そうした哀苦や残酷さを一度は肯定し、なおわれわれが前を向いておのれの現実と対峙していくことができる人間の〈思想〉である。」――本書「はじめに」より

  

『〈自己完結社会〉の成立――環境哲学と現代人間学のための思想的試み(下巻)』(上柿崇英著/農林統計出版)


   
〈有限の生〉とともに生きるということ。人は「意のままにならない生」の哀苦や残酷さを前に、それでも〈世界了解〉を果たすべく格闘し続ける。そこにある人間の〈美〉と〈救い〉の原理を探る。

「求められているのは、人間が生きることの哀苦や残酷さを前に、なお現実と対峙していくことができる、人間としての自信だからである。……それらを支えてくれるのは、この世界に一歩踏みだしていく勇気と、〈共同〉を通じて積み重ねられた〈役割〉や〈信頼〉や〈許し〉の経験、そして〈存在の連なり〉のなかで「担い手としての生」を生きる覚悟とによって形となった、〈自己存在〉に対する自分自身の〈信頼〉に他ならない。」――本書、第十章「最終考察」より

本書の目次について


本書のおすすめの読み方について


本書の購入を検討されている方へ


   

本書の目次について(上巻) →(下巻)




はじめに

序論――本書の構成と主要概念について

(1)不透明な時代における知への危機感
(2)「現代人間学」の方法論的特徴と〈思想〉の実践
(3)本書における三つのアプローチ
(4)本書の構成について
(5)本書の底本と表記(文体)について


第一部 時代と人間への問い――〈自己完結社会〉への目なざし

第一章 「理念なき時代」における“時代性”

(1)「理念なき時代」の参照点としての「20世紀」
(2)「20世紀」における“経済成長”の含意
(3)「20世紀」における“科学技術”の含意
(4)「理念なき時代」の始まりと「20世紀」の“亡霊”
(5)「理念なき時代」における“科学技術”のもうひとつの含意
(6)変容する人間の存在様式
(7)現代において見られる矛盾の兆候――〈関係性の病理〉と〈生の混乱〉
(8)“人間の未来”と二つのシナリオ――「火星への移住」が可能になるとき

第二章 人間学の“亡霊”と〈自立した個人〉のイデオロギー

(1)〈自立した個人〉というイデオロギー
(2)〈自立した個人〉をめぐる根源的な矛盾①――約束されたシナリオと「20世紀」
(3)〈自立した個人〉をめぐる根源的な矛盾②――〈生の自己完結化〉および〈生の脱身体化〉の“写像”としての個人の「自立」
(4)新たな“人間学”の必要性


第二部 「人間的〈環境〉」の分析と人類史における連続性/非連続性

第二部のための序
第三章 人間存在と〈環境〉

(1)なぜ人間学において〈環境〉が問題となるのか
(2)主体によって定義され、存在を成立させる基盤となる〈環境〉の概念
(3)「人間的〈環境〉」における、〈環境〉の「二重構造」
(4)「人為的生態系」の“物質的側面”と“非物質的側面”
(5)「人間的〈環境〉」における、特異な構造としての〈社会〉

第四章 人類史的観点における「人間的〈環境〉」の構造転換

(1)人間の“質的変容”と人類史における特異点
(2)〈人間〉、〈社会〉、〈自然〉の三項関係という枠組み
(3)第一の特異点――「農耕の成立」と「〈自然〉と〈人間〉の間接化」
(4)第二の特異点――「近代的社会様式の成立」と「〈社会〉と〈自然〉の切断」
(5)第一中間考察――第三の特異点としての〈自己完結社会〉


第三部 「人間的〈生〉」の分析と〈社会的装置〉

第三部のための序
第五章 「人間的〈生〉」の分析と「〈生〉の三契機」

(1)「人間的〈生〉」と〈生活世界〉
(2)「人間的〈生〉」における〈生存〉、〈現実存在〉、〈継承〉の諸契機
(3)「不可視」となった「人間的〈生〉」
(4)「〈ユーザー〉としての生」と〈生活世界〉の「空洞化」
(5)「集団的〈生存〉」と〈根源的葛藤〉、そして「〈生〉の舞台装置」としての〈社会〉の概念
(6)「〈生〉の三契機」の内的連関

第六章 〈生〉を変容させる〈社会的装置〉とは何か

(1)〈社会的装置〉という概念
(2)「〈生〉の舞台装置」と〈社会的装置〉の連続性/非連続性
(3)〈社会的装置〉の〈生活世界〉からの自立化
(4)第二中間考察――「〈社会〉と〈人間〉の切断」の再考


第四部 「人間的〈関係性〉」の分析と〈共同〉の条件

第四部のための序
第七章 〈関係性〉の人間学

(1)「人間的〈関係性〉」という視点について
(2)「人間的〈関係性〉」の基本構造としての「〈我‐汝〉の構造」
(3)「人間的〈関係性〉」における〈間柄〉の概念
(4)「人間的〈関係性〉」における〈距離〉の概念
(5)「ゼロ属性の倫理」と「意のままになる他者」

第八章 〈共同〉の条件とその人間学的基盤

(1)人間存在における〈共同〉の概念
(2)「牧歌主義的‐弁証法的共同論」批判
(3)〈共同〉概念の再定義
(4)〈共同〉が成立するための諸条件
(5)「〈共同〉のための作法や知恵」としての〈役割〉、〈信頼〉、〈許し〉の原理
(6)〈共同〉破綻と「不介入の倫理」
(7)第三中間考察――諸概念の整理

 
   

本書の目次について(下巻) →(上巻)




第五部 〈有限の生〉と〈無限の生〉

第五部のための序
第九章 〈自己完結社会〉の成立と〈生活世界〉の構造転換

(1)「意味のある過去」と、「生きた地平」に立つことについて
(2)重厚な〈生活世界〉と〈社会的装置〉の萌芽
(3)構造転換の“過渡期”と〈旅人〉の時代
(4)〈郊外〉の成立と〈旅人〉の定住化
(5)「情報世界」の台頭と〈漂流人〉の出現
(6)〈自己完結社会〉の成立
(7)“時代”と人間の〈生〉

第十章 最終考察――人間の未来と〈有限の生〉

(1)〈無限の生〉と〈有限の生〉――「世界観=人間観」という視座
(2)〈無限の生〉と西洋近代哲学の深淵
(3)〈無限の生〉の「無間地獄」
(4)究極の「ユートピア」――「脳人間」と「自殺の権利」
(5)〈有限の生〉とともに生きる
(6)〈世界了解〉①――人間の〈救い〉について
(7)〈世界了解〉②――人間の〈美〉について
(8)結論


補論一 残された課題としての〈文化〉への問い
補論二 学術的論点のための五つの考察

(1)「自由」の問題について
(2)「疎外論」の問題について
(3)「個と全体」の問題について
(4)「自己実現」の問題について
(5)「ポストモダン論」について


おわりに


付録一 『現代人間学・人間存在論研究』発刊によせて
付録二 『現代人間学・人間存在論研究』第一号のための序
付録三 『現代人間学・人間存在論研究』第二号のための序
付録四 『現代人間学・人間存在論研究』第三号のための序
付録五 『現代人間学・人間存在論研究』第四号のための序


参考文献一覧


 
   

本書のおすすめの読み方について


 

 本書は抽象的な思考を中心とした長文となりますので、はじめて手に取ってくださった方が最初から順に読んでいきますと、本書の本当に伝えたい内容に行きつく前に、挫折してしまうかもしれません。

 それはとても残念なことですので、このページでは、予備知識のない方が本書を読むにあたって、もっとも手軽で効率がいいと思われる方法を、以下、ご紹介しておきたいと思います。

   

ステップ1


 まずは、以下の順序で該当箇所を読んでみてください。

   
上巻:はじめに
 ↓
   
下巻:第十章第六節:〈世界了解〉①――人間の〈救い〉について
 ↓
   
下巻:第十章第七節:〈世界了解〉②――人間の〈美〉について
 ↓
   
下巻:第十章第八節:結論

 この部分を読んでいただきますと、詳細は不明であっても、本書が伝えようとしている内容の雰囲気は感じ取ってもらえると思います。最初の「上巻:はじめに」については、リンク先から原文を読めるようにしてありますので、そちらを読んでいただいても構いません。

   

ステップ2


 そして、ステップ1まで進んだ方で、本書に興味を持ってくださった方、もっと読んでみたいと感じてくださった方は、ぜひ今度は、以下の順序で該当箇所を読んでみていただけたらと思います。

   
上巻:第四章第五節:第一中間考察――第三の特異点としての〈自己完結社会〉
 ↓
   
上巻:第六章:第四節:第二中間考察――「〈社会〉と〈人間〉の切断」の再考
 ↓
   
上巻:第七章第五節:「ゼロ属性の倫理」と「意のままになる他者」
 ↓
   
上巻:第八章第六節:〈共同〉破綻と「不介入の倫理」
 ↓
   
下巻:第九章第六節:〈自己完結社会〉の成立
 ↓
   
下巻:第九章第七節:“時代”と人間の〈生〉
 ↓
   
下巻:第十章第一節~第十章第五節

 ここまで読んでいただくと、本書の理論的な枠組みと考察内容がある程度理解していただけると思います。

 著者が言うのもなんですが、本書は「分かりやすい」本だとは思いません。それでも、どこかで何か響くものを感じ取っていただけるようでしたら、ぜひ最後まで一度読み切っていただきたいと思います。

 〈思想〉の書物は、著者の思考の系譜が物語のように現れている部分があって、重要な主題や概念は、形を変えながら繰り返し出てくることになります。

 ですので、途中で理解できない一文があったとしても、読み進めるうちにイメージが共有されていき、文章に込めた世界観や人間観が、突然身近に感じられるときがきたりすることがあるからです。

 ぜひ辛抱強くお付き合いいただけたらと思います。