用語解説
「〈社会〉と〈人間〉の切断」 【しぜんとしゃかいのせつだん】
- 「第一の特異点以降、〈社会〉は純粋にそれ自身の論理によって成長していく道を切り開かれ、第二の特異点を経て、自らに歯止めをかける一切のもの――地球という最後の“有限性”を除いて――を失っていった。つまり、本書において第三の特異点を「〈社会〉と〈人間〉の切断」と呼ぶのは、こうして爆発的に膨張する〈社会〉が、〈自然〉との間に「第一の切断」を引き起こして後、いまや〈人間〉との間においても、ある種の「切断」をもたらしているのではないかということを想定してのことなのである。」 (上巻 124)
人類史を〈人間〉、〈社会〉、〈自然〉の三項関係として捉えたときに見えてくる、人間の存在様式の質的変容に関わる第三の特異点のこと。
ここには、「近代的社会様式の成立」が人間社会の論理のみによって突き動かされてきた結果、自然生態系との「整合性」を欠いた形で肥大化してきたように、まさしくその延長線上において、今日、肥大化する〈社会〉が人間存在それ自身に対して「整合性」を失いつつあるとは言えないか、そしてまさしく〈自己完結社会〉の成立に伴う〈生の自己完結化〉と〈生の脱身体化〉、そして〈関係性の病理〉と〈生の混乱〉こそが、そうした側面の表れではないかという問いかけが含まれている。
とはいえこの説明は不十分なものであり、本書では「〈生〉の分析」や「〈関係性〉の分析」を用いてさらに深めることになる。