ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「〈生活世界〉の空洞化」 【せいかつせかいのくうどうか】


 「例えばわれわれは、実際にかつての人々が到底得られなかった水準での「自由」と「平等」、そして途方もない物質的な富の渦中に生きている。そして「学校教育」や「経済活動」に関わるいくつかのハードルが課せられるとはいえ、「自己実現」を至上とする立場からすれば、これほどまでにそうした機会が与えられた時代はないと言えるからである。しかし、そこには「人間的〈生〉」を実現するための具体的な場、等身大の“世界”の姿はない。そのことが意味するのは、現代社会における〈生活世界〉の「空洞化」である。」 (上巻 154-155



 「〈生〉の三契機」の実現を〈社会的装置〉への委託によって成立させる「〈ユーザー〉としての生」が拡大した現代社会において、どれだけ〈生〉に肉薄しようとも、自ら〈生〉を実現している実感を持てなくなること。

 その背景には、「自己実現」を頂点とした、「学校教育」「経済活動」といった現代的な生活実践が、その根底にある〈生存〉の実現〈現実存在〉の実現〈継承〉の実現をめぐる根源的な意味やつながりを欠くか、矮小化した形でしか感受できないものとして行われているからである。

 「〈生活世界〉の空洞化」は、自己を〈存在の連なり〉、つまり時空間的な物事のつながりのなかにあるもののなかから認識することができなくなることをも意味している。