ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「学校教育」 【がっこうきょういく】


 「というのも現代社会における〈継承〉は、その大部分が、やはり〈社会的装置〉によって実現されているからである。それを象徴するのは、われわれが“学校”と呼ぶ〈社会的装置〉のサブシステムの存在である。そこでは同年齢の人間が一か所に集められ、専門家集団を通じて、われわれの社会に蓄積されてきた「意味体系=世界像」が知識という形で効率的に伝達される。……本書ではそれを「学校教育」と呼ぶことにしよう。」 (上巻 150-151



 「〈生〉の三契機」としての〈継承〉を実現する現代的な様式のことで、同年齢の人間が一か所に集められ、専門家集団を通じて、効率的に「意味体系=世界像」の再生産が行われる点に特徴がある。

 その点で学校とは〈社会的装置〉のサブシステムである。もともと「意味体系=世界像」の再生産は、〈生活世界〉の文脈に根ざした対人関係や生活経験を通じて実践され、学校とは、本来そうした〈生活者〉としての実践からは得られない、特殊な知識を取得するための補助的な場に過ぎなかった。

 しかし学校への依託の比重が高まると、〈生活世界〉は〈継承〉を実現していく潜在的な教育力を失い、結果として学校だけが〈生活世界〉という足場を失ったまま残されることになった。

 このプロセスは〈社会的措置〉への依存が進行する、「〈社会的装置〉の〈生活世界〉からの自立化」をめぐる典型的な事例でもある。なお、現代では「自己実現」が人生における至上の価値とされ、「学校教育」は「経済活動」の手段、「経済活動」は「自己実現」のための手段として理解される。