ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「意味のある過去」 【いみのあるかこ】


 「つまりそこに〈この私〉、すなわち〈自己存在〉と結びつく意味や実感が不在であるなら、それは想像された架空の歴史年代を記憶するのと大差はないということである。過去は、〈自己存在〉に対する明確な連続性のもとで掌握されることによって――すなわち〈存在の連なり〉の一部として位置づけられることによって――はじめて事実の断片を超えた“意味のあるもの”となる。われわれが求める「意味のある過去」とは、いわばこうした形で掌握された過去のことなのである。」 (下巻 11-12



 特定の歴史的事実が、〈自己存在〉への明確な連続性のもとで捉えられることよって、そこに内在する意味が〈この私〉という存在に対して深い実感を伴って感受できる状態になったもののこと。

 今日のわれわれは、過去の歴史的事実について、知ろうと思えばインターネットを通じていくらでも知ることができる。しかしそれを単に知識として理解するだけでは、架空の歴史年代を記憶するのと大差はない。

 しかしそれが「場の連続性」と「〈生〉の連続性」を媒介として、〈自己存在〉に連なるものとして理解されるとき(換言すると、〈この私〉とともに〈存在の連なり〉のもとに位置づけられるとき)、過去は単なる事実の断片を超えて“意味のあるもの”となる。

 なお、こうした連続性を実感するための実践的な手段として「時間の地図の比喩」「一世代25歳の比喩」がある。