ディスカッション



〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「自由連帯の共同論」 【じゆうれんたいのきょうどうろん】


 「最後に、第三の論点となる「自由連帯の共同論」とは、われわれが目指すべき未来を論じる際、そこでは近代において獲得された「自由な個性」を損なうことなく、共同性を新たな形で再興すること、つまり両者の止揚こそが重要であると考える立場のことを指している。」 (上巻 253



 「自然主義の共同論」「共同体批判の共同論」と並んで「牧歌主義的―弁証法的共同論」を構成する主要な論点のひとつで、求められるべきは「共同体=むら」の復活ではなく、あくまで「自由な個性」と統合された新たな形態として共同性を再構築することであるとの「自由な個性と共同性の止揚」をその中心的な理念とする。

 「共同体=むら」への「個性の埋没」という視点からの批判は丸山眞男や大塚久雄らにおいてすでに見られたが、資本主義社会への批判という文脈に、E・フロムの『自由からの逃走』に象徴される全体主義への警鐘という問題意識が加わることで「自由な個性」を主体とした人々の連帯というアプローチとなる。

 90年代から2000年代にかけてNGO、NPO、ボランティア団体などが隆盛すると、そうした団体こそがこうした理念を体現した存在として積極的に評価された(「アソシエーション論」)。とはいえ、こうしたアソシエーションはすでに頭打ちを迎えており、「自由な個性と共同性の止揚」という単純化された図式自体が問いなおされるべき段階に来ている。