ディスカッション


未来世界を哲学する―環境と資源・エネルギーの哲学)
未来世界を哲学する
環境と資源・エネルギーの哲学


〈自己完結社会〉の成立(上)
上柿崇英著


〈自己完結社会〉の成立(下)
上柿崇英著

環境哲学と人間学の架橋(上柿崇英 
/尾関周二編)
環境哲学と人間学の架橋
上柿崇英/尾関周二編


研究会誌『現代人間学・
人間存在論研究』

   

用語解説

   

「アソシエーション論」 【あそしえーしょんろん】


 「こうして“市場”への嫌悪が高まるなかで、人々が活路を見いだしたのは新たな連帯の可能性であった。この時代、国際的に活躍するNGOが脚光を浴び、国内ではボランティア団体やNPOの存在が注目されていた。そして彼らがそこに見いだしたのは、情報技術を駆使して意識を共有した人々が、国家行政とも営利企業とも異なる形で、自発的に問題解決に取り組んでいく姿であった。……このとき彼らの脳裏にあったのは、「第二期」に規定されたあの“連帯する市民”の再来であるとともに、「第三期」に「自由な個性」と共同性の止揚として語られた人間的理想が具現化していく姿でもあったのである。……それらは当時、人々に“もうひとつの社会”を連想させるだけの十分な力を持っていたのである。」 (下巻 35



 人間論としてのマルクスの再解釈から出発した「第二次マルクス主義」による「牧歌主義的―弁証法的共同論」と密接に関わり、人間存在のあるべき様式を「自由な個性と共同性の止揚」と位置づけ、公共性(公共圏)論などとも共鳴しつつ、それをNGO、NPO、ボランティア団体などに投影した理論。〈自立した個人〉の具体的なイメージも提供した。

 2000年代初頭においては、市場経済的な領域にも、国家的な領域にも属さないこうしたアソシエーションが、「市場の失敗」や「国家の失敗」を補完し、あらゆる社会的な問題が解決されていくかのようにも語られた。

 しかし現在では、こうしたアソシエーションの一定程度の定着と同時に、頭打ちも見受けられる。理論的な問題点としては、建て前の自由や自発性とは裏腹に、アソシエーションにもある種の抑圧や強制の芽があること(これは人間が形成する組織である限り避けられないだろう)、自由と自発性を強調するなら、関心が合致しない人々による不参加の意思、連帯そのものを拒否するという人々の自由もまた認めなければならないにもかかわらず、予定調和を前提に、こうした点が無視されてきたことがあげられる。